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執筆者の写真Takumi Ohira

2023/07/06

2023/07/06

今日も暑い。

みんな感じているのだから

言う必要がないのに言ってしまう。

店の鍵を開けまずエアコンのスイッチを押し、

ようやく小慣れてきた開店準備をしていた。

1年も経つと自分の店が発する音は大体わかってくる。


お客様が来たか郵便が来たかの違いとか


タオル用の加温機の水が少なくなってきたなとか


誰かが灰皿つかってるなとか


どこの蛇口の締めが甘いとか


スタッフがどこの棚を開けたかも耳で分かる。

しかし今日は初めての音がした。

ピタッピタッと水が一滴ずつ

なにかに当たっているような音だ。

聞き慣れない音が聞こえるというのは

トラブルの可能性が高い。

店内を注視すると予感は的中、

エアコンの排水ホースの途中から

水が漏れていた。

時は既に開店5分前、

適当な桶を当てがうことしかできず

仕事が始まった。

普通なら不安と焦りで

接客に影響する状況だが、

しかし今日はKJの散髪予約が入っている。

KJという男は常に全力で生きている男で

今は全力で父親をしていて、

全力で空調設備を生業にしている。

誠に身勝手ではあるが

事前に漏水の旨の連絡はしなかったが、

やはり彼は快く全力で修理してくれた。

僕も全力で彼の髪を切った。

彼の熱さが今店内を冷やしてくれている。

自分では何もできないけど、

自分ならどうにかできると友達達が思わせてくれる。

そして今日までただのエアコンだったものが

思い出の品になった。


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